ペースト食とは?ミキサー食との違い・作り方・注意点を給食のプロが解説
ペースト食は、噛む力や飲み込む力が低下した方でも食べやすいよう、食材をなめらかなペースト状に調整した食事です。
しかし、「ミキサー食との違いは?」「どうやって作ればよい?」「誤嚥を防ぐために気を付けることは?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、全国300以上の施設に1日7万食を提供する名阪食品が、ペースト食の特徴やミキサー食との違い、基本的な作り方、提供時の注意点までわかりやすく解説します。
介護施設や病院で食事提供に携わる方はもちろん、ご家庭で介護食を作る方もぜひ参考にしてください。
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名阪食品お役立ち情報発信チーム
名阪食品の「お役立ち情報」の編集者。「すべては、お客様の健康で楽しく豊かな食生活のために」を理念に1日約7万食の給食を提供している。給食運営施設は学校・保育・高齢者施設・社員食堂と幅広く、お客様のお悩みや喜んでいただいた事例を発信している。
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目次
- 1. ペースト食とは?咀嚼・嚥下機能が低下した方向けの食形態
- 2. ペースト食とミキサー食・ムース食・ソフト食の違い
- 3. ペースト食の作り方4ステップ
- 4. ペースト食を提供する際の4つの注意点
- 5. 施設でペースト食を安定して提供する3つの方法
- 6. まとめ|ペースト食は「安全性」と「食べる楽しみ」の両立が大切
1. ペースト食とは?咀嚼・嚥下機能が低下した方向けの食形態
ペースト食とは、調理した食材をミキサーなどでなめらかにすりつぶした食事のことです。噛む力(咀嚼機能)や飲み込む力(嚥下機能)が低下した方でも、食べやすいように工夫されています。
特徴は次の3点です。
- 咀嚼をほとんど必要とせず、口の中でまとめやすい
- スプーンですくえる程度のまとまりがある
- なめらかで、べたつきや粒が少ない
粒をどこまで残すか、水分量をどうするかは、食べる方の機能に合わせて調整します。
均質でなめらかに仕上げる場合もあれば、本人の咀嚼・嚥下機能や食形態の基準に応じて、やわらかい微細な粒を含む状態に調整する場合もあります。
ペースト食が向いている人
ペースト食が向いている人として、以下が挙げられます。
- 歯の欠損などで、食べ物をほとんど噛めない方
- 舌や口の筋力が弱り、食べ物を口の中でまとめにくい方
- 刻み食や極刻み食でも、むせ込みが増えてきた方
これらの方にペースト食が向いている理由として、誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクがあります。
実際、厚生労働省の人口動態統計によると、誤嚥性肺炎は日本人の死因の上位に位置しています(2023年時点で第6位)。
本人の機能に合った食形態を選ぶことは、誤嚥リスクの軽減につながる重要な取り組みです。ただし、食形態の変更は自己判断せず、医師・歯科医師・管理栄養士・言語聴覚士などの専門職に相談しましょう。
食形態の段階の中でのペースト食の位置づけ
介護食には、噛む力や飲み込む力に応じて、以下のようにいくつかの食形態があります。
- 常食
- 一口大
- 刻み食
- 極刻み食
- ミキサー食またはペースト食
- ソフト食またはゼリー食
※ミキサー食以降の段階は、施設によって呼び方や順番が異なります。
なかでもペースト食は、刻み食・極刻み食では対応が難しくなった段階で検討される食形態です。嚥下機能に応じた食事の段階を示す「嚥下食ピラミッド」でも、食材の形やまとまり、水分量などを調整する必要がある段階に位置づけられます。
食形態を選ぶ際に大切なのは、必要以上に段階を下げないことです。本人の機能よりもやわらかすぎる食事を続けると、噛む力の低下や食事の満足感の減少につながる可能性があります。現在の咀嚼・嚥下機能で安全に食べられる範囲のうち、できるだけ通常の食事に近い段階を選ぶことが基本です。
2. ペースト食とミキサー食・ムース食・ソフト食の違い
ペースト食と似た食形態には、ミキサー食・ムース食・ソフト食があります。
それぞれ食材の加工方法や硬さ、対象となる方が異なるため、特徴を理解して使い分けることが大切です。
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食形態 |
特徴 |
主な対象 |
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ペースト食 |
食材をなめらかなペースト状に調整した食事。施設によって粘度や粒の基準が異なる |
咀嚼や食塊形成が難しい方 |
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ミキサー食 |
食材をミキサーで細かくした食事。水分量やとろみの程度は施設によって異なる |
咀嚼・嚥下機能が低下した方 |
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ムース食 |
ペースト状にした食材をゲル化剤などで固め、まとまりやすく成形した食事 |
咀嚼や食塊形成が難しい方 |
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ソフト食 |
やわらかく、舌や歯ぐきなどでつぶせるように調整した食事 |
咀嚼機能が低下した方 |
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
ミキサー食との違い|大きな違いは「まとまりやすさ」
ペースト食とミキサー食は、どちらも食材をミキサーなどでなめらかにした食事ですが、実際の現場ではほぼ同じ意味で使われることも少なくありません。
あえて区別する場合は、水分量や粘度の違いで分類されるのが一般的です。
- ミキサー食:水分量が多く、流動性が高い。提供時にとろみ調整を行うことも多い
- ペースト食:水分量を抑え、粘度を高めることで口の中でまとまりやすく、飲み込みやすい
ただし、ペースト食とミキサー食の定義は統一されているわけではありません。施設によって呼び方や基準が異なり、名阪食品が給食を提供する施設でも、「ペースト食」という名称でも硬さや粘度が異なるケースがあります。
転院や施設入所などで食事内容を引き継ぐ際は、名称だけで判断せず、なめらかさや粘度、粒の有無など実際の物性を確認することが重要です。
ムース食・ソフト食との違い|見た目と食べやすさが異なる
ムース食は、ペースト状にした食材へゲル化剤などを加えて固め、食材の形を再現した食事です。見た目が通常の料理に近いため、食欲を維持しやすいというメリットがあります。
一方、ソフト食は、食材本来の形をできるだけ残しながら、舌でつぶせる程度までやわらかく調理した食事です。噛む力がある程度残っている方でも食べやすく、通常食に近い食事を楽しめます。
名阪食品では、ソフト食の自社ブランド「そふまる」を展開しています。見た目のおいしさと食べやすさを両立したい場合は、ソフト食も有力な選択肢の一つです。
【関連記事】介護食の種類5つとそれぞれの調理方法を解説!
どの食形態を選ぶべきか|大切なのは継続的な見直し
食形態は、本人の咀嚼機能や嚥下機能を評価したうえで、安全に食べられるものを選択します。
一般的には、次のような流れで決定します。
- 医師・歯科医師・言語聴覚士などが咀嚼・嚥下機能を評価する
- 管理栄養士などの多職種で適切な食形態を検討する
- 提供後は、むせ込みや食べ残し、食事中の疲労などを観察し、必要に応じて見直す
一度決めた食形態を、そのまま継続するとは限りません。利用者の状態は日々変化するため、機能の回復に合わせて段階を上げたり、反対に安全性を優先して段階を下げたりと、継続的に見直していくことが大切です。
3. ペースト食の作り方4ステップ
ペースト食は、食材を細かくするだけではなく、「なめらかさ」「まとまりやすさ」「飲み込みやすさ」を意識して調理することが大切です。
基本的には、次の4つのステップで作ります。
- 食材を十分に加熱する
野菜や肉、魚などの食材を煮る・蒸すなどして、箸やスプーンで簡単につぶせる程度までやわらかくします。加熱が不十分だと、ミキサーにかけても繊維や粒が残りやすくなります。 - ミキサーでなめらかに撹拌する
やわらかくした食材をミキサーやフードプロセッサーで、粒がなくなるまでしっかり撹拌します。複数の食材を一緒に撹拌すると味や色が混ざってしまうため、料理ごとに別々に調理・盛り付けるのがおすすめです。 - 水分を加えて硬さを調整する
だし汁やスープなどを少しずつ加えながら、食べやすい濃度に調整します。汁気の少ない料理ほど水分が必要になりますが、一度に加えすぎるとまとまりが悪くなるため、様子を見ながら調整しましょう。 - とろみを調整して提供する
水分が多く、まとまりにくい場合は、必要に応じてとろみ調整用食品などを使用します。ただし、とろみを付けすぎるとべたつきや咽頭残留につながることがあるため、本人の嚥下機能に適した物性へ調整することが大切です。
ペースト食は、食材によって適切な水分量や粘度が異なります。毎回仕上がりを確認しながら、安全に飲み込める状態へ調整することが、おいしく安心して食べられるペースト食づくりのポイントです。
ペースト食に向く食材・向かない食材
食材には、ペースト食に向くものと向かないものがあります。
【向いている食材】
- じゃがいも・かぼちゃなどの芋類
- にんじん・大根など、十分に加熱した根菜
- 豆腐・卵
- 骨や皮を除き、十分に加熱した魚
【向いていない食材】
- ごぼう・れんこん・たけのこなど繊維の多い野菜
- ほうれん草や小松菜など筋が残りやすい葉物野菜
- こんにゃく・いか・たこなど弾力の強い食材
- 豆の皮、魚の骨や皮などが残りやすい食材
- 生野菜など、硬さや繊維が残りやすい食材
ご飯やパンなどのデンプンを多く含む食材は、そのまま撹拌すると粘りやべたつきが強くなり、飲み込みにくくなることがあります。
十分に水分を含ませるほか、必要に応じて酵素入りの専用調整食品や市販のペースト粥などを活用しましょう。
とろみ剤・ゲル化剤を使うときのポイント
ペースト食のまとまりを調整する際は、とろみ剤やゲル化剤を使用することがあります。安全に提供するため、次のポイントを押さえましょう。
- 製品の使用量を守り、ダマができないようによく混ぜる
- とろみが安定するまで数分かかるため、時間を置いて状態を確認する
- とろみをつけすぎないようにし、飲み込みやすい粘度に調整する
なお、とろみ剤は製品によって粘度の付き方や安定するまでの時間が異なります。使用前には必ず製品の説明書を確認し、適切な方法で調整しましょう。
また、とろみ調整用食品の中には、消費者庁の特別用途食品制度に基づく表示許可を受けた製品もあります。製品を選ぶ際は、そのような表示も一つの目安になります。
4. ペースト食を提供する際の4つの注意点
ペースト食は、食材をなめらかにするだけでは安全な食事とはいえません。
誤嚥を防ぎながら、必要な栄養を確保し、食事を楽しんでもらうためには、次の4つのポイントを意識することが大切です。
- 粘度の調整
- 栄養不足
- 見た目への配慮
- 調理負担・品質のばらつき
それぞれ詳しく見ていきましょう。
粘度の調整ミスによる誤嚥リスク
ペースト食で最も重要なのが、適切な粘度に調整することです。
水分が多すぎると食材が口の中でまとまらず、気管へ流れ込みやすくなります。一方で、とろみが強すぎると喉に張り付き、かえって飲み込みにくくなることがあります。
適切な粘度は、利用者一人ひとりの嚥下機能によって異なります。提供後も、むせ込みや飲み込みの様子を観察しながら、医師や言語聴覚士、管理栄養士などの専門職と連携して継続的に見直すことが重要です。
水分の添加により栄養密度が低下することがある
ペースト食は、なめらかさを調整するために水分を加えることが多く、同じ一食分でもエネルギーやたんぱく質の密度が低くなりやすい食形態です。
そのため、見た目の量が増えて食べきれなくなると、必要な栄養量を確保できない場合がある点に注意が必要です。
低栄養を防ぐためには、次のような工夫が有効です。
- 卵や脂ののった魚など、少量でも栄養価の高い食材を取り入れる
- 必要に応じて栄養補助食品を活用する
- 食べられる量と必要な栄養量のバランスを管理栄養士と検討する
見た目への配慮が食欲を左右する
ペースト食は、調理方法によっては料理の形がなくなり、「何を食べているかわからない」状態になりやすい食形態です。見た目が単調になると、食欲の低下や食べ残しにつながることもあります。
なお、名阪食品では食事を楽しんでいただくために、次のような工夫を行っています。
- 食材ごとに別々に撹拌し、彩りを活かして盛り付ける
- 「鮭のムニエルです」など料理名を伝えながら提供する
- 器や盛り付け方を工夫し、料理らしさを演出する
食事は栄養を摂るだけでなく、毎日の楽しみでもあります。安全性だけでなく、見た目やおいしそうと感じられる工夫も大切なポイントです。
調理負担が大きく、品質がばらつきやすい
ペースト食は、食材ごとに加熱・撹拌・水分調整・粘度調整を行う必要があり、通常の食事よりも調理工程が多くなります。特に施設で大量調理を行う場合は、調理スタッフの負担も小さくありません。
また、担当者や調理日によって粘度や仕上がりが変わると、安全性や食べやすさに影響するおそれがあります。
安定した品質で提供するためには、調理手順や物性の基準を標準化し、必要に応じて給食委託会社や市販の介護食を活用することも有効です。利用者が毎日安心して食べられる食事を提供するためには、個人の経験だけでなく、品質を維持する仕組みづくりが欠かせません。
5. 施設でペースト食を安定して提供する3つの方法
施設でペースト食を安定した品質で提供するには、調理する人の経験や勘に頼るのではなく、仕組みを整えることが重要です。
品質のばらつきを抑えながら、安全でおいしい食事を提供する方法として、主に次の3つがあります。
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方法 |
概要 |
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調理手順を標準化する |
調理工程や物性の基準を統一し、品質を安定させる |
|
既製品の形態食を活用する |
調理負担を軽減しながら均一な品質を維持する |
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給食委託を利用する |
専門スタッフによる調理体制を構築し、施設運営を効率化する |
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
調理手順を標準化し、品質を一定に保つ
まず取り組みたいのが、調理工程を標準化することです。
例えば、「食材と水分の配合」「撹拌時間」「とろみ剤の使用量」などを数値でルール化しておくことで、担当者が変わっても同じ品質を再現しやすくなります。
名阪食品では、施設様のご要望に応じたペースト食を提供できるよう打合せの上調理手順を決めています。
既製品の形態食を上手に活用する
ペースト食をすべて厨房で手作りする必要はありません。
現在では、ペースト食やミキサー食、ソフト食などを調理済みの状態で提供するメーカーも増えており、解凍・再加熱・盛り付けだけで提供できる商品もあります。
既製品を取り入れることで、次のようなメリットがあります。
- 撹拌や粘度調整などの調理工程を削減できる
- 毎回同じ物性で提供でき、安全性を維持しやすい
- 人手不足の日でも、安定した品質を確保しやすい
食材や介護食を発注する際は、形態食の取り扱いがあるかどうかも確認しておくと安心です。
給食委託を活用し、専門体制で対応する
ペースト食を含む形態食への対応力を高めたい場合は、給食委託も有効な選択肢です。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは、施設側にも栄養士の配置が求められます。しかし実際には、栄養士が調理業務に多くの時間を割き、本来注力すべき栄養ケアや加算関連業務まで手が回らないケースも少なくありません。
調理業務を委託することで、施設栄養士は利用者一人ひとりへの栄養管理や多職種連携など、専門性を活かした業務に集中しやすくなります。
委託会社を選ぶ際は、次のような点を確認するとよいでしょう。
- ペースト食やソフト食、禁止食などへの対応実績があるか
- 個別の食形態変更や嗜好への対応が柔軟にできるか
- HACCPなどの衛生管理体制が整っているか
なお、名阪食品は50年以上にわたり給食委託サービスを提供し、高齢者施設をはじめ全国270以上の施設で給食を提供しています。ペースト食やソフト食、禁止食などにも柔軟に対応し、利用者一人ひとりの状態に合わせた食事提供を行っています。
給食委託を検討する際は、複数社から相見積もりを取り、対応できる食形態や品質管理体制、サポート内容を比較したうえで、自施設に合った委託先を選ぶことをおすすめします。
6. まとめ|ペースト食は「安全性」と「食べる楽しみ」の両立が大切
ペースト食は、咀嚼機能や嚥下機能が低下した方でも、安全に食事を続けられるよう工夫された食形態です。
しかし、食材をなめらかにするだけでは十分ではなく、適切な粘度や栄養バランス、見た目への配慮まで含めて調整することで、安心して食べられる食事になります。
また、施設で安定した品質を維持するには、調理手順の標準化や既製品の活用、必要に応じた給食委託など、無理なく継続できる提供体制を整えることも欠かせません。
名阪食品では、保育園・高齢者施設・病院・社員食堂など、さまざまな業態に合わせた給食委託サービスをご提供しています。ペースト食やソフト食をはじめとする形態食にも柔軟に対応し、利用者一人ひとりの状態に合わせた食事づくりをサポート可能です。
「形態食への対応に不安がある」「調理負担を減らしながら品質を維持したい」とお考えの施設様は、ぜひお気軽にご相談ください。無料でお見積もり・ご提案いたします。




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